◆気になる言葉たち◆短歌と詩と -3ページ目

あとを引く歌(2)

目に追って、それで終わりにできないのはなぜだろう・・・
ここに引用し、さらに考えるきっかけにいたしましょう。


いつの日か倖せを山と積みて来る幻の馬車は馭者のない馬車


稲葉京子 『ガラスの檻(おり)』


・馭者(ぎょしゃ)








あとを引く歌(1)・・名詞の力

三十六色の色鉛筆でまず我は三十六個の風船を描く


おもしろい作品です。
「これが短歌?」と言う人もいるでしょう。
「我」ではなく「僕」であれば小学生がつくった作品だと思うかも知れません。


シンプルな表現、構成にひかれ、そして私はうなります。
この歌には表現している内容以上に伝わってくる

気分のようなものがあります。
その気分のようなものが魅力となっているようです。


その気分を導きだすものは、まず「三十六色の色鉛筆」でしょう。
「十二色」ではありません。

「三十六色の色鉛筆」という名詞の力。

心まで見えてくる名詞です。
「三十六色の色鉛筆」を目の前にしているときの気分を想像してみましょう。
かなり高揚しているはずです。
プレゼントされたもの、と想像すればなおさらです。


その気分をさらに明らかにするのが「三十六個の風船を描く」です。
三十六色の風船をひとつひとつ描いている作者を想像してみましょう。
気分はさらに確かなものになったはずです。


表現されている事物、情景は単純ですが、

我々はそれ以上のものを受け取っているでしょう。
直接的に書かれていない気分のようなもの、

それがこの歌の眼目になっているようです。



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あとを引く歌(1)

目に追って、それで終わりにできないのはなぜだろう・・・
ここに引用し、さらに考えるきっかけにいたしましょう。


三十六色の色鉛筆でまず我は三十六個の風船を描く


俵 万智 『かぜのてのひら』


・描(か)く



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生命力

歌は文学である以上、美しいものであっていけないということは毛頭ない。
しかしながら、ただきれいごとにしよう、美しく飾ろうとするだけに
こころを労する、などということは、空しいことである。
・・・・・
自らの生命を一首にこもらせたいという念願によって、
歌は作られなければならない。
・・・・・
短歌というものの魅力は、作者それぞれの生命力というものを、
端的にこもらせた文学であるということである。
したがって、そのためには無駄な装飾などを必要としないのである。
飾ろう飾ろうとすればするほど、生命力は喪失してしまう。


(木俣 修)










引き込む力(7)・・「ドーナツ論」

幼な子は通ふごとくにひとつ咲く水仙のまへにゆきてこごみぬ


少しごたごたした感じはしますが・・・

写生のゆきとどいた魅力的な作品です。


継続的にこのブログをご覧いただいている方は
これから私が説明することのおおかたは想像できるかも知れません。


同じようなことをこれまでにも書いているからです。


幼な子を丁寧に写生しています。
登場するのは幼な子と水仙。


この歌の主題は幼な子への思いです。

そして、その眼目の思いは直接的には何も表現されていません。


河野裕子の「ドーナツ論」で言えばドーナツの穴です。


引き込む力のある作品に多く見られるスタイルです。
敢て隠しているのかも知れません。


その眼目の思いは、幼な子の動きを描くことによって、

間接的に表現されています。
「ドーナツ論」のドーナツの部分です。


間接的に抑制して表現されているからこそ
作者の心が読者に確かに伝わってくるのです。










引き込む力(7)

この歌になぜ引き込まれるのだろうか・・・

ここに引用し、われわれが考える足場にしたいと考えています。


幼な子は通ふごとくにひとつ咲く水仙のまへにゆきてこごみぬ


福田栄一 『この花に及かず』


この歌はなぜ引き込む力を持っているのだろうか?

ご意見のある方はコメントをお寄せください。










見上げる光

眼球に注射液入りみづうみの魚が見上げる光ゆれたり


あこがれの横山未来子さんに選んでいただき、短歌雑誌の活字になりました。


自由題です。


「めんどうくさい」 が口癖の私がこれまで十年以上、
短歌をつくりつづけて来れたのは、少し不思議な気がします。


今回のように歌人の方々に選んでいただくことにより
励まされ、エネルギーをいただけることに感謝をしています。



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引き込む力(6)・・感覚として伝える

内深く応援の旗ふるごときこころは言はず群に紛るる


尾崎左永子 『変貌の時代に』


前半は比喩であり一首に具体的で明確な事柄は示されていません。
しかし、作者の思い・気分はかなりはっきりと伝わってきます。


その意味において短歌の特徴がよく出ている作品だと言えるでしょう。


この作者の気分を小説で表現するとしたら、

かなりの長文になると思われます。


優れた短歌には作者の心を感覚として伝える力があります。


一朝一夕にはできないでしょうが
私も一首のなかに「気分」や「思い」をそれとなく織り込むことを

めざしたいと思っています。



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朝の太陽

なぜといふ扉を閉ぢて眼球の手術の朝の太陽を待つ


あこがれの横山未来子さんに選んでいただき、短歌雑誌の活字になりました。


自由題です。


創作のエネルギーはこのような喜びから生まれるようです。

私の場合。



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引き込む力(6)

この歌になぜ引き込まれるのだろうか・・・

ここに引用し、われわれが考える足場にしたいと考えています。


内深く応援の旗ふるごときこころは言はず群に紛るる


尾崎左永子 『変貌の時代に』


この歌はなぜ引き込む力を持っているのだろうか?

ご意見のある方はコメントをお寄せください。